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物語と地図:Google マップで聖地巡礼?

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 子どもの頃から地図が好きだった。買ってもらった物語に地図がついていると、それだけで胸が高鳴った。とりわけ手描きの、物語の主人公たちが冒険の足跡を自ら描き込んでいったような地図が大好きで、その出来栄え如何では、幾晩も幸福な時間を過ごすことができた。じぶんでは、ちょっと変わった好みだなとは思っていたが、存外に同好の士は多いようだ。  大人になってからも、地図好みは変わらない。『 江戸切絵図 』なんかでも、半日眺めていても飽きることはない。想像の翼は疲れを知らず、気分はすっかり江戸っ子になりきっている。『 江戸買物独案内 』なんぞを繰りながら、江戸バーチャル・ウィンドウ・ショッピングを楽しんでみるのも一興だ。古地図が売れるのも無理はない。  海外へ行くなら、何をおいても真っ先に行ってみたいと思っていたのが、イングランド北部の湖沼地帯にあるウィンダミア湖だ。ランサムサーガの主要な舞台となった、いわゆる聖地というやつだ。  じつはウィンダミア瑚よりも、その隣にあるコニストン湖の方が舞台のモデルというにはよりふさわしいことを後年知ることになるのだけれど、訳者あと書きにそうあったので、コニストン瑚のことは長年知らなかった。ともかく、海外でどこへ一番行きたいかを問われると、必ず「ウィンダミア瑚」と答え、それを誰も知らないことにずっと失望し続けてきた。  『 ツバメ号とアマゾン号 』に初めて出会ったのは確か小学四年生の頃で、母が友人からアーサー・ランサム全集12巻を一揃いで譲り受けて来たのだ。その日から、冒険と眠れない夜が始まり、私はその興奮を誰かに話したくて仕方なかったけれど、残念ながらランサムサーガを知り、その冒険と興奮を共有できる友だちが現れることはついになかった。  訳者のほかにも、日本人のランサマイトがいることを知ったのは、21世紀に入ってまだ間もない頃のことだったと思う。サーガへの愛情溢れんばかりのウェブサイトを見つけ、日本にもランサムを知り、愛するひとがいたことに、いたく感動したことを覚えている。あれほどサーガのことを語り合える友人との出会いを熱望し、恋焦がれるような思いを抱いていたにも関わらず、結局のところ、じぶん以外にもランサマイトが日本にいたという事実に満足して、特に誰とも交流することはなく、今日もいまだに孤独なランサマイトのままなのであった。  地図を眺めるこ